ぼくのゲーセンの歴史1
ゲーセンに行き始めたのは中学生の時。
家から約5キロくらいのところにあった小さいゲーセン。
それまで家で友達とパッドで対戦したり、レンタルビデオ屋の中にあるネオジオ筐体でCPU戦をやっていただけだった。
そこは壁際に1人台(シューティングとか)が5台くらい、中心に対戦台が4台くらい並んでいる程度の小さなゲーセンだった。
今思えば大人が居た記憶がなく、中高生ばかりだった気がする。
おそらくもう少し行動範囲を広げればもっと対戦環境がいいゲーセンがあったからだと思うが、中学生だった僕はそこに行くまでが精一杯だった。
一度ゲーセンでプレイすることを覚えてからは時間があれば1人でも行ってた。
もちろん知らない人との対戦だが、それがとても楽しかった。
人と会話するのが得意じゃなかったが、お金さえ入れれば誰でも同じゲームをプレイ出来る環境は素晴らしいと思った。
勝ったり負けたり、同じくらいのレベルの人がいたのもよかった。
そのゲーセンには、僕が行くときはほぼ必ずと言っていいほど居た人がいた。
おそらく近所に住んでいたのであろう僕よりも少し年上の男の子だったが、いつも集団の輪の中にいるジャイアンのような人だった。
同じ空間で同じゲームをしてるのだが、僕はその人があまり好きにはなれなかった。
いつも偉そうにしていて、人がゲームをしていても筐体に座って来たりした。
そこに来ている子供達はほぼその人と仲良くしてたので、コミュニケーションが苦手な僕はますます一人ぼっちだった。
自分でそれでも良いと思ってたから別段羨ましく思ったりもしなかったが、ゲームもせず近くで大声で話している声はとてもうるさく鬱陶しく思うこともあった。
ある日、いつもと同じようにそのゲーセンに行った。
いつもと同じようにジャイアングループがいたが、気にせず格ゲーをプレイ。
暫くすると反対側から乱入が。
どうやらジャイアンが入って来たようだった。
勝ったり負けたりを繰り返しているうちに帰宅時間になったので切り上げて帰ろうと思い席を立った。
(今日も対戦楽しかったな)と思いながらゲーセンを出ようとすると後ろから「帰れ帰れ!!」という大声が聞こえてきた。
振り返るとどうやらジャイアンが僕に言っていたようで、ジャイアン集団がみんなで笑っていた。
僕はバカにするようなその言い方に少しカチンときたが(言われなくても帰るよ)と思いながら後味悪くゲーセンを出た。
毎回行くたびに薄々感じてはいたが、どうやら僕はジャイアン集団に良く思われてはいないようだった。
たぶん仲良くしない僕に対して「シマを荒らすな」的な感情を持っていたんじゃないかと思う。
いつもはなんとなくそんな感じするな、と思っていた程度だったが、ここまであからさまに態度に出されたのは初めてだった。
ゲーム内では同じルールの中で対等なのに、リアルでそんなことを言われてショックだった。
会話したことはなかったので、プレイスタイルが嫌いだったのだろう。
そのゲーセンにはそれ以降も行ってたが、ジャイアンが視界に入るたびにその一件を思い出してしまい気持ちよくプレイが出来なかった。
ゲームをしていても楽しさよりもモヤモヤの方が大きくなり、次第に行く頻度も減っていった。
数年通ったゲーセンだったが、そんなことがあったり、途中でスペースの半分がスロットに置き換わったりしたので別のゲーセンに行くようになった。
初めて通ったゲーセンは、対戦の楽しさと人間の酷さ、集団の強さ、孤独の心細さを学ばせてくれる、そんなところだった。
そのゲーセンは今はもう無く、跡地はコインランドリーになっているようだ。